戦場のハローワーク

加藤健二郎「戦場のハローワーク」

軍事ジャーナリストや戦場カメラマンになるには……を紹介する形で著者の戦場体験を書いたルポ。パフォーマンスなのか自己顕示欲が強いのか、「戦争はチャンス」「楽しい」と言い切ってしまう偽悪的な姿勢が鼻につく。でも、こんな人もいるのかと開き直って読めば面白い。

戦場にいるのも人間なら、普通の青年も人格破綻者もいて、そこに“日常”が生まれる。戦場が悲惨一色ではないことを伝える意味では出色の出来。

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

佐野眞一「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」

「月刊PLAYBOY」の連載をまとめた約650ページの大作。沖縄やくざの系譜や琉球独立論、知事選の泡沫候補など、忘れられた沖縄の現代史を訪ね歩く。

沖縄を“被害者”として神聖化するのではなく、戦果アギヤーや軍用地主の存在、奄美出身者への苛烈な差別なども取り上げている。
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戦争における「人殺し」の心理学

デーヴ・グロスマン「戦争における『人殺し』の心理学」

原題はThe Psychological Cost of Learning to Kill in War and Society。軍属である著者の問いは「なぜ人は人を殺さないのか」。

第2次世界大戦で、兵士の発砲率は20%以下だったという。目前に死の危険が迫っても、人は人を殺す事を戸惑う。しかし軍隊の心理学は「条件付け」や「脱感作」、距離的な条件を変えることで、人を殺す事に慣れさせた。朝鮮戦争を経てベトナム戦争では発砲率は90%まで上昇したという。一方、人殺しが心にどれ程の負荷をかけるのか。

単純な反戦や戦争賛美を超えた戦争論。

インパラの朝

中村安希「インパラの朝」

26歳女性バックパッカー。アジアからアフリカを経てロカ岬への2年間。 開高健ノンフィクション賞受賞ということでルポっぽいものを期待して読んだら少し肩すかし。旅行記として見れば、現地の人や他の旅行者との距離感が絶妙で面白い。

前半はいかにも旅人の視点で違和感を感じる部分も多いけど、後半になるにつれて少しずつ変わっていく。

新 忘れられた日本人

佐野眞一「新 忘れられた日本人」

伝説的な地上げ屋、蒟蒻ジャーナリスト、スケベ椅子の開発者……一時代を築きながら、歴史から忘れられつつある人たちを取り上げた短篇評伝集。

タイトルは宮本常一の名著「忘れられた日本人」から。少々大それたタイトルをつけた感があるが、面白い。