シラノ・ド・ベルジュラック (光文社古典新訳文庫)

ロスタン「シラノ・ド・ベルジュラック」
渡辺守章訳 (光文社古典新訳文庫)

フランス演劇の代表作の一つで、映画、ミュージカルから翻案まで数多くの派生作品を生んだ傑作。詩人で哲学者、剣士と多才だが、容姿だけに恵まれなかった心優しき主人公シラノ・ド・ベルジュラックのキャラクターがとにかく魅力的。

巨大な鼻にコンプレックスを抱えるシラノは、従妹のロクサーヌに恋するが、彼女は美男子のクリスチャンに思いを寄せている。言葉に自信を持てないクリスチャンに替わって恋文を書き、二人の恋の取り持ちをするシラノの秘めた思いが切ない。やがてクリスチャンが戦死し――。

岩波文庫に収録されている辰野隆・鈴木信太郎訳が名訳として親しまれてきたが、本書は演劇集団円での公演(2001年、橋爪功主演)に向けて新たに訳されたものの完訳版。ロスタンの戯曲は定型韻文で書かれており、そのリズムをいかした翻訳となっている。そのため、戯曲としては決して読みやすいものではないが、テンポが良く、シラノの長台詞などのキレは抜群。

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