贋作・桜の森の満開の下

野田秀樹「贋作・桜の森の満開の下」

「夢の遊眠社」時代の代表作の一つ。再演を重ね、今年8月には「野田版・桜の森の満開の下」として歌舞伎化もされた。

初演は1989年。贋作(がんさく)ではなく「にせさく」と読む。ただの模倣やパロディーではなく、そこからさらにもう一歩ずれた作品であることの表明だろう。坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」を下敷きとした作品だが、野田秀樹らしい言葉遊びとスピード感溢れる展開で、要約は難しい。

ヒダの王のもとに3人の匠が集められ、仏像を彫るように命じられる。人と鬼が繰り広げるドタバタの中で、古代日本の権力闘争の歴史と、異物を排除する人間社会の業の深さが浮かび上がってくる。

飛び回る言葉で、小説の重い言葉では描けないものの輪郭を捉える。演劇にしかできない表現の真骨頂。

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