まほろば

蓬莱竜太「まほろば」

第53回(2009年)岸田賞受賞作。

田舎の旧家を舞台とした女性6人の会話劇。“家”のため、娘に婿を取らせたい母、恋人と別れて帰ってきたアラフォーの長女、シングルマザーの次女、妊娠が分かったその娘、近所のませた少女、おおらかな祖母。男は外から聞こえる祭り囃子の声でしか登場しない。

非常によく出来た戯曲で、閉経したと主張する長女に頭を抱える母や、自分と同じ道を歩もうとする娘に戸惑う次女など、女性たちの言い合いが面白い。重いテーマを扱っていながら、そこに正面から切り込むことはなく、強烈な毒母になりうる要素を持った母も、どこか滑稽な人物として描かれている。

選評で野田秀樹が使っている「実によくできた昔のテレビのホームドラマのよう」という表現が、この作品の魅力も限界もよく表している。

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