姉の島

村田喜代子「姉の島」

海は多くの命を生み出し、飲み込み、包み、育んできた

舞台は九州の離島。海女仲間や家族らの他愛ない会話が続く。島の海女には、ある年齢から歳を二倍に数える倍暦という風習があり、百数十歳という年齢に記紀神話の世界が重なる。読みながら、この作品世界が心地よく、いつまでも身を浸していたいと思う。

海を舞台にした小説は数あれど、これほど、海の水の重さを感じさせ、自分が海のただなかで生きているということを感じさせる小説はない。

大きな物語や劇的な展開があるわけでもないし、ある意味、「日常系」と言ってもいいかもしれない。それでも、読み終えた時に世界の見え方が変わる。私たちは海洋のただなかに生きているし、生きてきたし、生きていく。過去と未来が自然な形で物語の中に息づいている。

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