アメリカン・ブッダ

柴田勝家「アメリカン・ブッダ」

VRのような「もう一つの世界」は、もはや荒唐無稽な設定や、遠い未来の話とは感じられなくなってきている。技術としては未熟でも「SF」というフィクションの枠を超えたリアリティを持ち始めている。

表題作は、災禍に見舞われ、人口の大半が仮想空間に移り住んだ近未来の米国が舞台。現実世界に残った、仏教を信じるネイティブ・アメリカンが人々を先導する。

巻頭の「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」は仮想現実の世界で一生を過ごす架空の少数民族を描く。

その他、南方熊楠が登場する短編など、民俗学や怪奇小説のテイストがある作品が多い。どの短編も設定が魅力的で、著者の書くワイドスクリーン・バロック的な娯楽長編や、ハードSFのような壮大なスケールの作品も読んでみたい。

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