「筒井康隆コレクション」(2014~17年)の刊行に合わせて行われたロングインタビューをまとめたもので、それほど期待せずに読み始めたら、これがめっぽう面白い。
初期のドタバタ、ナンセンスSFから、ジャンルを超えた作品群へ。日本文学史において最も多く実験的な取り組みをしてきた作家と言っても過言ではないだろう。
本人が語っている通り、作風が多岐にわたり、代表作が多すぎるが故に、代表作を選ぶことが難しい(あえて一冊選ぶと「時をかける少女」になってしまう)。
ページ数が作中の時間や主人公の意識の流れと対応する「虚人たち」(81年)、ファンタジーの傑作「旅のラゴス」(86年)、叙述トリックを用いた「ロートレック荘事件」(90年)、文芸批評と大学政治をモチーフとした「文学部唯野教授」(90年)、パソコン通信による読者の反応を刻々と反映させた新聞連載小説「朝のガスパール」(91~92年)、コピー&ペーストを用いた「ダンシング・ヴァニティ」(08年)ーーときりがない。
エッセイ集「読書の極意と掟」「創作の極意と掟」などを読むと、著者の創作のバックグラウンドには、哲学書から南米文学まで古今東西の膨大な書物の読書経験があることが分かる。
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著者の作品は十数冊は読んでいるが、実はそこまではまったことがない。面白いと思いつつ、はまるところまでは行かない。それなのに定期的に手に取ってしまう。
「好き」というほどでもない作家の中では、間違いなく最も多く作品を読んでいる。作風が多岐にわたるせいか、「もうこの作家の作品はいいや」と決してならないし、もっと読みたいと思ってしまう。好きという自覚がなくても、それは既にファンということなのかもしれない。