推し、燃ゆ

宇佐見りん「推し、燃ゆ」

タイトルが秀逸。心酔するアイドルがファンを殴ったことで炎上する。現代的で軽やかな題材だが、身体性のある文章は大器を感じさせる。決してポップなだけの話ではない。

誰かを「推す」ということ。それを突き詰めていくと、ある種の信仰の様相を呈し、さらに他者と自身との同化にまで至る。「あたし」は「推す」ことによって自身を理解する。

推しが引退し、「あたし」は推しではなく現実を見ることになる。最後は無難な着地で、個人的にはその先を読んでみたかった気もするが、この中編はこれで十分かもしれない。

デビュー作「かか」でも独特の言語感覚、リズム感がある作家だと思ったが、そこには中上健次の影響なども生々しく刻まれていた。2作目となる本作で自分の文章をしっかり掴んだように感じる。

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