小野一光「家族喰い ―尼崎連続変死事件の真相」
疑似家族を精神的に支配し、血縁同士で暴力を振るわせ、親族の財産まで搾り取る。逃げ出しても追いかけ、気に入らなければ殺してしまう。
何より恐ろしいのは、普通の環境の、普通の感覚を持った人たちがちょっとした因縁で巻き込まれ、まともな生活も大人としての矜持も失ってしまうということ。
さらに言うなら、角田美代子自身もサイコパスのような存在ではなく、その辺にいるモンスターのような人間とさほど変わらないのではないか。
細部を見ると極めて異常な事件と感じるのに、全体としては決して特異なことではなく、こんなケースは他にいくらでもあるのではないかと思わされる。自分が関わることの無い世界の人たちとは思えない恐ろしさがある。