掏摸

中村文則「掏摸」

スリ師の主人公の前に現れる、悪の塊のような男。設定も人物描写もリアリティに乏しいけど、かえって話の軸がはっきりと感じられ、一種の犯罪小説として物語に引き込まれる。登場人物の内面描写も最小限で、運命の理不尽さが際立つ。文体も物語の速度も現代的だけど、全体に漂う“悪ぶった感じ”は、どこか古風な印象。

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