高山文彦「火花 北条民雄の生涯」
「何もかも奪われてしまって、ただ一つ、生命だけが取り残された」と「いのちの初夜」で書いた北條民雄。
「社会的人間として亡びるだけではありません。そんな浅はかな亡び方では決してないのです」
癩を病み、23歳の若さで夭逝するまで生きることの恐ろしさを極限化した生を見つめ続けた。その作品は究極の所で、生を肯定する叫びとなった。
「びくびくと生きている生命が肉体を獲得するのです」
ハンセン病患者が触れたものさえ忌避された当時、その北條を支え、交流を続けた川端康成の真摯さも印象深い。