菊地成孔、大谷能生「東京大学のアルバート・アイラー ―東大ジャズ講義録」歴史編&キーワード編
講義録だが、むちゃくちゃ面白い。音源を次から次へと紹介しながら、軽妙な語り口で菊地・大谷史観とも言うべきジャズの歴史を編んでいく。これまで何となく聞いていたジャズが高度な記号性や論理を有し、それが商業性の中でどう変化してきたかがよく分かる。
歴史編の前期に続き、後期はキーワード編。ジャズを中心に、近代以降の音楽がどう記号化されたのか、され得なかったのか。
個人的に面白かったのは、最初のブルースの項。ブルースとともに現れたブルーノート(スケール)が、長短二元の西洋音楽の調性からいかに外れたものだったのか。後半は楽理の話が増えて理解できない部分があったが、これは本書の欠点ではなく、自分の問題。
タイトル通り、豊穣で、緻密な混沌に圧倒される一冊。