1Q84 BOOK3

村上春樹「1Q84 BOOK 3」

おそらく、この物語はこれで完結したのだろう。BOOK3で意外なほど、おとなしく着地してしまった。BOOK1、2を読み終えた時は未完成だと感じたが、通読すると、2で一応すべての要素は出尽くし、完結していたような気もする。

現代の世界では「1984」のビッグ・ブラザーのような“大きな物語”に人は集まらず、リトル・ピープルという“小さな物語”、あるいは“個人の物語”が力を持つ。それは危険でもあるが、人と人がつながりあえる可能性でもある。

「神の子どもたちはみな踊る」で現れ始めた現実世界で生きることへの前向きな意志が、「海辺のカフカ」よりも鮮明になった。

父と子、愛、暴力、喪失…と、さまざまな要素を詰め込んだ大作であることは疑いない。村上春樹がずっと書きたいと言い続けた「総合小説」への試みなのだろう。次にどんな作品を書くのかが気になる。

コメントを残す