インド旅行記のロングセラー。出版社/雑誌の「旅行人」を主宰する著者の原点であり、1980年代後半以降のバックパッカーに大きな影響を与えた一冊。2001年刊行の新版は、86年刊行版に新たなイラストやデータが追加されている。
短期旅行でインドを訪れた著者は帰国後、「インド病」を発症し、仕事を捨てて1年を超す長旅に出る。グラフィックデザイナーとして働いていた著者らしいイラスト付きのエッセイで、インドを旅しながら感じた悲喜こもごもが軽やかな筆で綴られている。
それまでの「印度放浪」(藤原新也著、1972年)のようなタイトルと比べ、「ゴーゴー・インド」という響きの何とあっけらかんとしたことか。旅を、インドを、精神修行や自分探しの場として綴るのではなく、「おもしろくて楽しいもの」と書いたのが当時は新しかった。現在主流の「気負わない紀行本」のスタイルは、ここから始まったと言えるかもしれない。
著者の旅は80年代だが、自分がインドを訪れた03年当時でも、旅の光景はここに書かれているものとほとんど変わらなかった(その後、スマホの普及が旅のスタイルを大きく変えた)。本書は、気取りがないぶん、80年代〜00年代始めにかけての貴重な記録にもなっている。