オランダ風説書

松方冬子「オランダ風説書 ―『鎖国』日本に語られた『世界』」

長崎のオランダ商館が幕府に提出していた風説書。幕府が国際情勢をどう捉えていたのか、江戸時代の国際感覚を知りたいと思って手に取った本だが、実際には風説書の影響は限られていたという。

そもそも「鎖国」はカトリック勢力を排除するため西欧との交易を管理下に置いたのであって、国を閉ざしたわけではない。江戸初期、幕府はカトリック勢力を恐れて、海外情勢にかなり気を配り、オランダだけでなく、ジャンク船など複数の情報源を利用して風説書の裏をとっていた。オランダ側も、ポルトガルなどの競争相手を排除するため、積極的に情報(悪口多め)を提供した。やがて幕府の安定とともに海外への興味、恐怖は薄れ、オランダ側も競争相手がいなくなり、提供する情報は減っていった。

幕府にどの情報をあげるのか、通詞たちの判断が大きく影響していたことも興味深い。情報を上げる側は保身を図り、情報を聞く側も、聞きたいことを聞く方に流れていくのはいつの時代も変わらない。

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