引きこもりたちが、変わり者のカウンセラーの呼びかけで、「不気味の谷」を超えたバーチャルアイドル創作のプロジェクトに参加する。
荒唐無稽だが、決してスケールが大きいわけでも無い。それでもどこか惹かれる。不思議な手触りの小説。
きっと、登場人物の魅力だろう。ヒッキーたちが他者との繫がりを取り戻して前を向く終盤は、物語の王道を行き、現代社会に対する希望のメッセージとなっている。
×
本作は幻冬舎から単行本が刊行され、曲折を経てハヤカワ文庫に収録された。幻冬舎刊の「日本国紀」に対する著者の批判を会社側が封じようとしたことがトラブルの発端だが、結果的に幻冬舎という会社と社長の器の小ささを露呈しただけで、出版業界の契約慣行の問題や、「日本国紀」そのものの問題はうやむやのまま終わってしまった。