色川武大「離婚」
連作とも言える私小説的な短編4本。離婚した後も別れきれない男女の姿を描く。
奔放で依存的な妻と、保護者のようでいて常に一歩引いた場所にいる夫。人生や男女関係を達観して色々なことを諦めているようで、同時に執着も捨て切れない。
この二人ほどでなくても、多かれ少なかれ、人間関係にはこんな面があるのでは。理性的な夫に共感する人もいるだろうし、だからこそ卑怯だと妻に共感する人もいるだろう。
著者の作品は、阿佐田哲也のイメージしかなかった頃に「狂人日記」と「百」を読んで驚嘆したが、直木賞受賞作のこれも良い。文体は静かで文学的な印象を受けるが、内容は喜劇と言っても良い面白みがある。この作品は特に。