ガブリエル・ガルシア=マルケス「族長の秋」
独裁者の物語。「百年の孤独」と同じように神話的だが、なんと饒舌なのだろう。「われわれ」から始まり、一人称も時間軸も混沌として、誰が話しているのか分からない文体。改行も無く、ブラックで超現実的なエピソードが延々と続く。濃密で、やかましいくらいなのに、そこには強烈な孤独が滲む。
こうした感覚は他の地域の文学作品にはあまり感じられない。人も音も溢れているのに、どことなく静かな感じがした南米の市場を思い出した。小手先のマジックリアリズムとはわけが違う。
「生はつかのまのほろ苦いものだが、しかしほかに生はない」