池澤夏樹=個人編集 日本文学全集10

池澤夏樹=個人編集 日本文学全集10
能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵

池澤夏樹編集の日本文学全集。収録作のセンスも光るが、何より古典の現代語訳者のセレクトが面白い。町田康の宇治拾遺物語、古川日出男の平家物語、角田光代の源氏物語など、組み合わせを聞いただけで、小説好きなら手に取らずにはいられない。

この10巻は能・狂言に説経節、浄瑠璃という芸能分野の作品が収められている。今でこそ馴染みが薄れた作品群だが、どれも中世から江戸時代にかけて広く知られ、日本人の心性を作ってきた物語として必読(教科書に載っているような古典よりずっと影響力があっただろう)。何より「女殺油地獄」の現代性や「菅原伝授手習鑑」「仮名手本忠臣蔵」の構成の妙など、決して古びてなく、純粋に読み物として引き込まれる。訳のレベルも高く、謡い、語られるための曲をどう現代の散文に訳すかに作家の個性がはっきりと出ていて面白い。
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曾根崎心中・冥途の飛脚ほか

近松門左衛門「曾根崎心中・冥途の飛脚 他五篇」

掛詞などを多用した浄瑠璃の特殊な文体は、慣れない身には意味を掴みづらいが、流れるような詞の響きは現代の文学には存在しないもの。遊女に入れ上げて心中……なんて、しょうもない話だが、それでも最後の道行で泣けてしまう美しさがある。
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