妻と最期の十日間

桃井和馬「妻と最期の十日間」

人を喪うということに向き合う看取りの日々。 宗教的な部分で、著者の考え方に違和感を感じる部分もあるが、些細なこと。真に迫った記録。

新釈 走れメロス 他四篇

森見登美彦「新釈 走れメロス 他四篇」

上手いな~。読んで面白いだけでなく、感心してしまう出来。

この人の文体は、古典小説の真似と、大学生のくだらないノリが上手く混ざり合っている。巧みな名作のパロディに終始にやにや。

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

佐野眞一「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」

「月刊PLAYBOY」の連載をまとめた約650ページの大作。沖縄やくざの系譜や琉球独立論、知事選の泡沫候補など、忘れられた沖縄の現代史を訪ね歩く。

沖縄を“被害者”として神聖化するのではなく、戦果アギヤーや軍用地主の存在、奄美出身者への苛烈な差別なども取り上げている。
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晴れた日は巨大仏を見に

宮田珠己「晴れた日は巨大仏を見に」

日本各地に点在する巨大仏を訪ねる旅。誰がどうして建てたのか、のようなガイドブック的視点はほぼ皆無で、ただひたすら風景とのミスマッチを楽しんでいく。

宮田珠己本としてはややパワーに欠け、「私の旅に何をする」のようなユニークさ、有無を言わせないノリが少ないのが残念。面白いけど。

民俗学への招待

宮田登「民俗学への招待」

民俗学の大家、宮田登氏のコラム。年中行事や民間信仰を始め、学校の怪談など都市民俗学にも触れ、興味深いテーマを多く取り上げている。ただ、ダブりも多いし、どれも尻切れトンボな印象。あとがきで新聞に掲載したコラムと知って納得。「民俗学への招待」と言うタイトルから入門書と勘違いしたが、エッセイと考えれば、それなりに面白い。

東北学 忘れられた東北

赤坂憲雄「東北学 忘れられた東北」

近代日本と共に出発した柳田民俗学は、稲作を中心とした“瑞穂の国”として「ひとつの日本」を築く試みだった。それは東北の民とアイヌの間に強固な線引きを行い、共通性に目を閉ざした。境界を築くための「民俗学」から抜け出した時、縄文以前から人が住み、南北の文化が重なり合う東北の姿が見えてくる。

「忘れられた日本人」を著した宮本常一が晩年たどり着きつつあった“いくつもの日本”を見いだす民俗学へ。示唆に富んだ書。