大放浪 ―小野田少尉発見の旅

鈴木紀夫「大放浪 ―小野田少尉発見の旅」

フィリピン・ルバング島から小野田少尉を帰国させた青年、鈴木紀夫。60年代末、学生運動に馴染めず海外に出た、と言えば聞こえがいいが、実際は幼さに任せた大放浪。行く先々で奔放に振る舞い、人の世話になり、時に迷惑をかけつつ、自分は特別なことをしているという感覚は抜け切らない。藤原新也や沢木耕太郎に近い世代だが、「印度放浪」や「深夜特急」に比べ、ずいぶんと自分に正直で痛快な旅行記。

無一文に近いハードな旅でも、帰る場所として日本の家族がある以上、それは放浪ごっこでしかない。その後ろめたさがどこかにあったのかもしれない。何かを成したいという、ぼんやりとした渇望が旅を急がせる。

一時帰国すると、終戦後密林に潜伏していた小野田少尉を探しにフィリピンへ。一躍有名人になるが、「今度の体験はあまりにも重荷になった」。やがて雪男を探す旅に出て、ダウラギリで38歳で亡くなった。

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