狂言役者 ―ひねくれ半代記

茂山千之丞「狂言役者 ―ひねくれ半代記」

故茂山千之丞の半生記。

能の一部であった狂言を庶民の芸能として蘇らせ、現代でも興行として成立する文化に育てた茂山千作と千之丞。狂言師が映画や他ジャンルの舞台に出演するのは今や何も不思議なことではないが、その先駆けでもある。

江戸時代に士分を与えられていたこともあって、能・狂言師は厳格な家元制度のもと、他流派との共演や“河原者”である歌舞伎役者との交わりは厳しく制限されてきた。協会を除名されそうになりながら、他流との共演、歌舞伎への出演、オペラの演出と常に新しいことを行ってきた姿に、文化とはこうして可能性を広げ、育まれていくのかと感動を覚える。芸事に限らず、極めてリベラルな人で、こうした人の手でこそ伝統芸能が現代に残り得たというのはなかなか考えさせられる。

新劇の欠点が稽古場で完成品を作ってしまうことにあり、狂言や歌舞伎などは古来、様式の中で客の反応を見て舞台上で芝居を作り上げてきたという指摘も印象的。

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