徳永京子、藤原ちから「演劇最強論」
若手〜中堅劇団を中心とした演劇ガイド。以前は全く興味がなかった世界だが、最近足を踏み入れて、他のジャンル以上に今なお創造性豊かな作品が作られていることに驚いた。20世紀を通じて他の表現手法の鉱脈が徹底的に掘られ、停滞感が漂う中、それらの成果がよりプリミティブな芸術である舞台に環流しているのかもしれない。
巻頭に書かれているように、「自分には演劇しかない」という切迫した作り手が減り、「たくさんの候補のなかから演劇を選択した」、ある意味でゆとりのある作り手が増えていることも大きいのだろう。
ここに取り上げられている劇団を幾つか見れば、演劇が「最強」という言葉が大げさではないことが分かると思う。
一方で、演劇を語る言葉はまだまだ内向きな印象。作品や作者の言葉が分かりにくいのはともかく、第三者まで現代思想系の言葉遣いを好み過ぎでは。それにしても、改めて最近の主要な作り手の一覧を見ると、平田オリザと青年団関係者ばかりでちょっと驚く。