ミーナの行進

小川洋子「ミーナの行進」

ミーナと過ごした少女時代を回想した、静かで、とても優しい物語。昔からあるような設定で、起伏も無ければ、文体にも癖が無い。全体として在りし日への郷愁が満ちているが、それを全面に出しているわけでもない。それでも、物語から離れたくないと最後の1ページまで思わされる。卓越した描写とストーリーテリング。場面々々に滲む阪神間の空気も魅力的。思い出といううつくしいものを、四の五の言わず大切にしよう、そう思える作品。

コメントを残す