観音浄土に船出した人びと 熊野と補陀落渡海

根井浄「観音浄土に船出した人びと 熊野と補陀落渡海」

補陀落渡海 ―海の向こうにあるという浄土を目指し、死を覚悟して船出した人々の記録。

那智の補陀落山寺には行ったことがあるが、室戸や足摺、北は那珂など、他の地域にも渡海の拠点があったことは初めて知った。琉球に流れ着いて仏教活動を行い、薩摩で入定した日秀上人の話も興味深い。

各地に残る資料をもとに渡海の事例が細かく検討されているが、なぜ死を前提とした宗教的行為に人が進んだか、入定、即身仏にも通じることだが、そのあたりの考察も読みたかった。

渡海船は四門、四十九院の構造を持った“棺”として作られていた。死に向かう宗教的実践に人を駆り立てたものは何だったのだろう。死を往生として、終わりではなく始まりとして捉える感覚の違いなのだろうか。

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