銀の匙

中勘助「銀の匙」

明治生まれの著者が子供時代を綴った自伝的小説。友人との出会い。別れ。自分が「びりっこけ」だと気づいた痛み。日清戦争や修身の授業で感じた周囲とのずれ。教師への反発。とてもシンプルな文章ながら、前半から後半へと目線の高さが自然に変わっていって、著者自身がどこまで意識したのか分からないが、極めて巧みな印象も受ける。子供の目線で文章を書くのは難しい。これを二十代で書いた感性は相当なもの。どのページを読んでも、はっとさせられる。

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