小島信夫「抱擁家族」
アメリカ人の青年と不義を犯した妻。少しずつ崩れていく家庭。既に色々な読み解き方をされてきた作品で、主人公と妻の態度を通じて日本を描いたもの、あるいはアメリカ的なものとの出会いによる価値観の崩壊……というのが定番だが、今読むとシンプルに、他者と関わることの得体のしれなさを描いた作品として心に残る。
異質なものの混入で家族が壊れたのではなく、既にこの家族は壊れている。あるいは人間関係というものは自壊する構造を持っていて、そこに異質なものが入ってくる様子を喜劇として描いている。ぎこちない文章がかえって気持ち悪さを出している。