原武史「滝山コミューン一九七四」
70年代、新興団地の小学校を舞台に行われた民主主義の実践は、全体主義と表裏一体だった。
日教組の進める「集団作り」を教育に取り入れた若い教師は「児童自身が作る小学校」を理念に掲げ、各種委員会を組織する一方、クラスを班に分けて競わせる。遅刻や忘れ物は点検班によって厳しく採点され、「ダメ班」「ビリ班」はさらし者にされる。
徹底される減点式と連帯責任。繰り返される「みんなのため」と言う言葉。著者が皮肉を込め「滝山コミューン」と呼ぶ全体主義的な社会が生まれる。
惜しむらくは、文中で著者自身が自覚しているように、集団作りになじめなかった著者の怨念渦巻く“私=著者の物語”に回収されてしまっていることか。だからこそ迫力のある一冊でもある。