安部公房「密会」
弱者への愛には、いつも殺意が込められている。
冒頭のこの言葉が印象的な作品。時々読み返す安部公房だけど、この作品は高校生の時以来。
突如訪れた救急車に妻が連れ去られ、探しに訪れた病院では……。勃起不全の副院長が他人の下半身を下腹部につないで「馬」になっていたり、オルガスム・コンクールなる大会が開かれていたり、安部公房らしく描写は淡々としているが極めてグロテスクな内容。妻を探す男が、盗聴器で監視され、その盗聴テープを聞きながら自らの行動を三人称でノートに記述していくという構成も奇妙で、これほど不気味な小説はなかなか無い。