アフリカよ

賀曽利隆「アフリカよ」

1968-69年のアフリカ大陸をバイクとヒッチハイクで旅した記録。独立の熱気覚めやらぬ国から、紛争の続く土地、人気のない荒野まで。20歳の感性が瑞々しい。

エジプトの村では当時戦火を交えていたイスラエル人と間違われてリンチされるなど、何度も死線を越える厳しい旅だが、何より印象的なのが人の親切さ。村人から行きずりのトラック、地方の警官、役人まで、何度も助けられ、食事から宿まで無償の施しを受けている。

自分自身、旅先では人間観が変わるほどの温かさに何度も触れてきたし、旅行記では定番のエピソードだが、ここに描かれている人々の、素朴で、「おもてなし」のような言葉で飾らない親切さには、読んでいるこちらも胸が熱くなる。日本にも古来「善根宿」と呼ばれるものがあったように、旅人に親切にするのは人の本質で、それが近代化やグローバル化ですれていっているのかもしれない。

モザンビーク、ローデシア、ルワンダ、ウガンダ、ソマリア……著者の旅した国の多くが、この後、再び戦火と貧困の連鎖の中に入っていくのが悲しい。

コメントを残す