日本会議の研究

菅野完「日本会議の研究」

みんな知っているのに、みんなよくは知らない「日本会議」。そのルーツが新興宗教「生長の家」の学生運動にあり、現在もその人脈で政権を取り囲んでいることを丹念な資料調査で明らかにした労作。

現政権の閣僚の多くが日本会議国会議員懇談会に所属するなど、日本会議の存在感は大きいが、その詳細については保守系という位しか語られてこなかった。日本会議そのものは神道系などの各種団体の集まりだが、その実務は日本青年協議会が担っている。この日青協が70年代に右派学生を率いた生長の家学生運動の流れをくんでおり、現政権のブレーンとされる伊藤哲夫をはじめとする人物の多くが、宗教右翼だったころの生長の家(現在は政治運動から撤退し、むしろ左派寄りになっている)の教えを守っているという。彼らは、政治運動をやめた生長の家を飛び出した後、一種の原理主義者として「本流」を自負してきた。左派の運動がことごとく衰退した一方で、彼らは複数の関連団体を作り、デモ・陳情・署名・抗議集会・勉強会などの活動を粘り強く続け、さらに在特会やチャンネル桜など「行動する保守」を育ててきた。

著者が指摘しているように「保守系論壇誌」に出る学者や文化人の多くは、学術的業績や調査報道で名を上げたなどの“脈絡”が無い(左派も決まった面々が繰り返し登場するが、経歴などの脈絡は比較的分かりやすい)。それを不思議に思っていたが、著者は過去の膨大な資料を収集し、生長の家学生運動を中心に人脈がつながることを確かめている。

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