コンテナ物語

マルク・レビンソン「コンテナ物語―世界を変えたのは『箱』の発明だった」

地味なタイトルだが、ノンフィクションの名著として名高い一冊。

「コンテナ」が本格的に登場したのは二十世紀中盤。コンテナは物流コストを劇的に下げ、世界の経済を大きく変えた。箱での輸送は19世紀以前から試みられていたが、陸海共通のコンテナという仕組みはトラック運送で身を興した一人の男の発想だった。そのマルコム・マクリーンの生涯を軸に、社会と経済の変化を追っていく。

コンテナの普及以前は物流コストが商品の値段の数割に上り、しかもその大部分が港などでの積み卸しにかかっていた。港の回りには沖仲仕らが住み、一つの社会を形成していたが、コンテナは仲仕の仕事を奪い、人が集う旧来の“港町”を消滅させた。巨大なコンテナ船に対応できない港は急速に廃れ、小規模な海運会社はコンテナの導入に対応できず、統廃合が進んだ。当然、港湾労働者は反発し、度重なるストが起こったが、変化の波は止まらなかった。ベトナム戦争もコンテナの普及を後押しした(コンテナが本格的に導入されるまで、米国から送られる物資のベトナム側での荷揚げが間に合わず混乱を来していたことを初めて知った)。

グローバル化の引き金を引いたのは通信網や交通網の発達ではなく、コンテナの登場かもしれない。コンテナの普及は世界の形を変えた。日本の高度経済成長もコンテナ無くしてはあり得なかっただろう。

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