京極夏彦「魍魎の匣」
「箱」と「魍魎」を巡る話。複数の事件と登場人物それぞれの物語が終盤で結びつく巧みな構成を持った作品。
著者の作品はこれまでも何冊か読んだことがあるが、あまりピンと来なかった。ただ、この作品は名作と誉れ高いだけあって唸らされる出来。ミステリーとしての謎解きに感嘆するというよりは、物語性の高さと独特の世界観に引き込まれた。
曖昧な「魍魎」という存在と、それを収める「箱」への執着。
戦後間もない雑然とした社会を舞台に、悪趣味にならない程度にグロテスクな描写。蘊蓄の語りが何ページも続くが、文章はとても読みやすく、衒学趣味とスピード感が両立している。3冊で1000ページ超を一息に読み終えられた。