峯村健司「十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争」
権力闘争のドキュメント。毛沢東と劉少奇、華国鋒と鄧小平、江沢民と胡錦濤……、政治と権力闘争は切っても切り離せない関係だが、中国共産党のそれは民主国家の想像を遥かに上回る。
江沢民と胡錦濤の対立を利用して前任者による院政を廃し、腐敗撲滅キャンペーンでライバルも一掃して権力基盤を固めた習近平。著者は、「紅二代」の支持を受けた習の権力がかなり強いと強調する一方、その一極集中こそが中共の最大のリスクになりかねないと指摘している。
情報源がぼかされているため(これは仕方がないが)、どこまで正確な内容かは分からないものの、 ロサンゼルスの“愛人村”への潜入など現場に密着したルポは読み応えがある。中国の今がよくわかる労作。