ロック母

角田光代「ロック母」

1992~2006年に書かれた作品を集めた短編集。文学的修辞を用いずに、人間関係の微妙な空気を描かせたら著者の右に出る作家はそうそういないと思うが、粗削りな初期の作品にもその片鱗は伺える。

表題作は川端賞受賞作。出産を控えて故郷の島に帰った女性が、自分が残していったロックのレコード(ニルヴァーナ!)を大音量でひたすら聴き続ける“壊れた”母の姿を目にする。人生に付きまとう閉塞感と、その中で続いていく命という主題が鮮やかに描かれている。

コメントを残す