新潮新人賞、芥川賞受賞作。主人公はチェンナイで暮らす日本語教師の女性。大洪水の翌日に橋の上で見た光景を通じて、さまざまな物語が浮かび上がる。
ひと言でまとめてしまえばマジックリアリズムだが、随所にユーモアがあり、敬意を込めてホラ話と評する方がふさわしい気がする。「インドを舞台とした小説」と言うより、「どこまで本当か分からないインド滞在記」という手触りで楽しく読めた。
後半に語り手自身の半生が綴られるが、これが現実感のある平凡さで、良く言えばインドの描写と好対照、欲を言えばもっとホラに徹した内容を読んでみたかった気もする。