生野区から東成区にまたがる猪飼野地域は、現在も多くの在日コリアンが暮らす町だが、戦後間もない頃は愚連隊とヤクザが跋扈する一帯としても知られた。戦後大阪で一大勢力を築いた明友会は、その猪飼野で生まれた在日朝鮮人の愚連隊で、山口組との抗争に敗れて消滅した。
猪飼野で生まれ育った著者は、日夜喧嘩に明け暮れる仲間たちとともに少年期を過ごした。不良少年たちは、「三国人」と呼ばれた親たちの葛藤を目の当たりにしながら、愚連隊の兄貴分たちの後を追うように成長していく。やがて明友会が山口組に敗れ、社会が高度経済成長に湧くようになる頃、街の風景も変わっていく。
ある者は同朋を潰した山口組傘下のヤクザの門を叩き、ある者は進学を選んだ。他の仲間たちもそれぞれの道に分かれ、日本社会の中に居場所を見つけようともがいた。かつての日本にあった、猥雑で生命力に溢れた土地の姿を、少年たちの目を通して記録したノンフィクション。