「ワンダー Wonder」で描かれなかった三つの物語。後日譚ではなく、前作でいじめっ子として描かれたジュリアンと、幼なじみのクリストファー、優等生のシャーロットの3人の視点で、それぞれの学校生活が綴られる。
遺伝子疾患で“特別”な顔に生まれたオーガスト。「ワンダー」では、5年生から学校に通い始めた彼の日常が、本人や友人の視点を通じて描かれる。オーガストと仲良くしつつも他人の視線が気になるクラスメートや、彼を愛しつつも時に苛立つ姉の感情など、きれい事の裏に隠れがちな複雑で繊細な感情が、一人一人丁寧に掘り下げられた。
いじめっ子として追い込まれていくジュリアン。オーガストに好意を持ちながら、成長していくうちに友達でいつづけることの難しさも感じるクリストファー。人の目を気にしすぎるシャーロット。前作で描かれた6人のエピソードに、3人の“ワンダー”が加わり、物語に奥行きと広がりが増した。前作とともに、児童書の枠を越えて広く読まれてほしい。
オーガストを巡る物語を通じて、著者は「人に親切にすること」を全力で肯定する。人に優しくすることは、自分自身を勇気づけ、自らの人生をも変えてゆく。