高野秀行「移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活」
在日外国人の「食」を訪ね歩いたルポ。取材相手の出身国はタイ、イラン、フィリピン、スーダンと多岐にわたる。彼らがふだん食べているのは日本食? それとも母国の料理? それなら食材はどこで手に入れているのだろう? 身近に住んでいても意外と知らない食生活。食はそのコミュニティーのありのままの姿を映し出す。
「日本は暮らしやすい」(“あたたかい”ではなく“楽”)という声が多く、ちょっと意外。日本社会に多様性が根付きつつあることが分かる一方で、初版から3年後の文庫版のためのあとがきでは、排他的な言説が急増した失望が書かれている。誰もが生きやすい社会は自分にとっても生きやすいはずなのに。
日本食は作るのが楽と口々に語られているのも興味深い。確かに料理のバリエーションを除けば、下処理や煮込む時間、調味料の種類などで日本食はシンプルと言えるかも。