深い河

遠藤周作「深い河」

著者の最晩年の作品で、生涯のテーマである宗教と日本人に関する考察の到達点とも言うべき長編。約20年ぶりに再読。

亡き妻や戦友への思いを抱えてインドへのツアーに参加した4人の男女と、欧米のキリスト教の教義になじめないまま、各地の修道会を転々とし、最後にインドに辿り着いた1人の男。5人の日本人の物語が、ガンガーのほとりで交錯する。そこで生と死、清と濁、聖と邪の境界はあいまいとなり、著者の筆は一神教と汎神論の垣根を取り払って、人間と信仰の本質に迫ろうとする。

仕事優先だった夫を思い続けた亡き妻や、インド人への蔑視を隠そうとしない軽薄なカメラマンなど、脇役の人物造形は浅く、物語の中心を担う5人それぞれのエピソードもありきたりと言っていい。それでも、この物語が強く胸を打つのは、作品そのものが著者にとっての祈りのようなものだからだろう。

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