バンコク楽宮ホテル

谷恒生「バンコク楽宮ホテル」

バンコクのヤワラー(チャイナタウン)にかつてあった安宿、楽宮旅社を舞台とした小説。日本社会に居場所を失ったような長期滞在者たちの無為の日々を描く。卑小でありながら、どこか憎めない個性的な人々が登場する。

隣のカンボジアでは内戦が続き、国境には難民キャンプができている。山師のような人々が街を跋扈し、日本人旅行者たちはマリファナと酒と女に溺れ、難民と娼婦を見下しつつもその生命力に圧倒される。

露悪的で、物語としても、小説としても決して優れているとは思わないが、不思議と引き込まれる。当時のバンコクを彷徨っていた日本人の姿を活写した貴重な風俗小説でもある。

Kindleでは配信されていないが、他の電子書籍ストアには電子版がある。

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