日本を降りる若者たち

下川裕治「日本を降りる若者たち」

日本社会は必死にその上に載り続けることを個人に強いる。しがみつくのをやめれば外に落ちてしまう。どこの社会にもそうした部分はあるものだろうけど、日本では一度失敗すると元の場所に戻りにくい。人目を気にせずに生きられる場所が少ない、あるいは見つけにくい。

バックパック旅行を描いてきた著者が、日本社会から降りて東南アジアで暮らすようになった人々の姿を記録したルポ。日本での短期労働で資金を稼ぎ、1年の大半をバンコクで何もせずだらだらと「外こもり」の生活を続ける人々の話が中心だが、積極的にタイで働き、生きることを選んだ人も登場する。

繰り返し語られるのが、誰も他者の生き方に口を挟まない社会の居心地の良さ。昼間からふらふらしていても誰も気に留めない。必死で働かなくても、必要なだけ稼いで何となく生きていくことができる。

日本で苦しんでいた人が、タイなら幸せになれるとは限らない。むしろ生きづらさの理由は内面にあることの方が多いだろう。それでも居場所を探す権利は誰にでもある。そうした生き方に共感するのか、甘えだと突き放すのか。逃げているととらえるのか、それとも日本で生きることこそが思考停止だと考えるのか。読む側の人生観も問われているように感じる。

2007年の刊で、その後、円安や物価の上昇などで「外こもり」を巡る状況は変化しつつある。一方で、日本社会の息苦しさも増しており、書かれている内容は古びていない。

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