横山悠太「吾輩ハ猫ニナル」
冒頭に「日本語を学ぶ中国人を読者に想定した小説を書く」とあるように、遊び心(一種の批評性と言えなくもない)に富んだ小説。ルビを大量に使用し、中国語(の漢字表記)と日本語の折衷と言った文体。外公(じいじ)、媽(おかん)、電視(テレビ)、方便店(コンビニ)などから、洗衣機(せんたくき)といった日本語かと思って読むとちょっと違う表記もあって、なんだか不思議な感覚。講(かた)り、累(つか)れ、さらには好基友(ホモダチ)といった単語まで。後半ルビが減ってくるが、それでもほぼ意味は取れる。どんな表現、表記でも飲み込んでしまう日本語の柔軟性を示していて不思議な読書体験を味わえるが、残念ながら、小説として面白いかというと。