日本の戦後を象徴する詩人の自伝。
1929年に日本の植民地下の釜山で生まれた著者は、皇民化教育で日本語を学び、「皇国」の勝利を信じて育った。解放後に民族意識に目覚めたが、日本の詩歌に親しみを感じ、ハングルを満足に使いこなすことができない自分に深いコンプレックスを抱く。
48年、朝鮮半島の南北分断に抗する済州島四・三事件に関わり、弾圧を逃れて翌49年に日本に渡った。それから70年。海峡を越え、38度線を超えて生きる「在日」としての立場を強く意識して様々な言葉を発信してきた。
二つの言語に引き裂かれ、南北に分かれた祖国から日本に渡った詩人の半生を通じて、越境する言葉の可能性と、日本の近現代史の影の側面が浮かび上がる。