化粧っ気が無く、不器用で、いつも公園の決まったベンチに座って子供たちにからかわれている「むらさきのスカートの女」。商店街の誰もが知っている彼女のことが気になり、友だちになりたいと思う「わたし」=目立たない自称「黄色いカーディガンの女」の視点から、その日常が描かれる。
「わたし」と同じ職場で働くことになった「むらさきのスカートの女」は、次第に俗っぽい“普通の女”になっていき、やがて破綻が訪れる。
「むらさきのスカートの女」の観察が進むにつれ、「わたし」の問題も明らかになってくる。コメディーのようでもあるし、不気味な話でもある。叙述トリック的な要素もあり、どこかもの悲しくもある。不思議な小説。
第161回(2019年上半期)芥川賞候補作。