我らが少女A

高村薫「我らが少女A」

「マークスの山」から始まる合田雄一郎シリーズの最新作。過去の未解決事件を巡り、一人の少女の姿が描かれる。

12年前に公園で殺された元美術教師と、その教え子だった少女A。少女Aの死と新証言をきっかけに再捜査が始まり、当時の人間関係が洗い直される。

合田は退官を控えて警察大学の教授となっており、刑事ではなく、一人の男として過去の事件と向き合う。新聞連載という短い断片で構成される形式を逆手に取り、合田を含む多視点の意欲的な構成で物語は紡がれる。

長編小説では異例と言えるほど、目まぐるしく視点が変わる。その小刻みのリズムに戸惑う読者もいるかもしれないが、通読すると、膨大な断片が積み重なって、土地を横軸、時間を縦軸とした立体的な人間模様が立ち現れる。同時に、人間の多面性、複雑さが浮き彫りになる。

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