どん底 部落差別自作自演事件

高山文彦「どん底 部落差別自作自演事件」

被差別部落の出身で役場の嘱託職員の男が、自身と関係者に差別ハガキを送り続け、偽計業務妨害で有罪になった事件。自作自演の背景に迫りつつ、現在も根深く残っている部落差別を浮き彫りにし、その闘争史に光を当てる力作。“犯人”だけでなく、関係者一人ひとりの人生を丁寧に追っている。

部落出身者の多くが、自らの生い立ちについて、配偶者やその親、友人などに、どこかで一度隠したり、言い出せなかったまま過ごしてしまった記憶を抱えている。それは背信の記憶として付きまとい、解放運動に関わっても、逃げ出してもその記憶に苦しめられる。

読んでいて何度も、これが昭和の時代の話ではなく、数年前のルポだということにため息が出た。

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