ロレッタ・ナポリオーニ「イスラム国 テロリストが国家をつくる時」
ISの誕生の経緯や現実主義の側面など分かりやすくまとまった一冊。
個人的には歴史的な位置づけが興味深い。20世紀は冷戦後の地域紛争も含めて国民国家の建設・覇権を志向した戦争だった。今中東などで行われているのは国民国家の戦争ではなく、軍閥が領土を得ようとする前近代の戦いで、そこに最新技術が用いられている。その中でISは思想的な純血主義を指向し、新たな国家の概念を築き上げようとしている。
先進国の内部にもこの純粋さを求める傾向はあり、21世紀は国民国家を乗り越えるどころか、逆行して別方向に走り始めているように感じる。ISに倣う集団が続いたら、今世紀は前世紀よりも悲惨な時代になりかねない。