蒼煌

黒川博行「蒼煌」

日本芸術院の新会員選挙を巡る熾烈な買収合戦を描く。現会員が新会員を選ぶという仕組みから絶対的な上下関係が生まれ、画家と画商、政治家の思惑が入り乱れ、億を超える金が動く。物語としては特段面白いものではないが、描かれている世界があまりに衝撃的で引き込まれる。

明らかに日展と分かる「邦展」など、モデルがはっきりしているのも面白い。展覧会の入選者が会派間で調整されていたのは周知のとおり。

日展で特選を取り、芸術院賞を取り、芸術院会員に選ばれ、文化功労者になり、文化勲章に届けば、芸術家の出世双六は“上がり”。

日本では、芸術で認められるためにも金を伴う運動が必要になる。芸術家が権威を求めるというのは本末転倒な気がするが、はっきりとした価値基準がない世界だからこそ目の前の階段を上ろうとするのだろう。

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