山田太一「日本の面影 ―ラフカディオ・ハーンの世界」
ラフカディオ・ハーンの半生を描いたドラマの脚本。名シーンが多く、話の見せ方がとにかく巧い。日本が過激な欧化に突き進んだ明治期に来日し、消えゆく日本の面影を愛したハーンが、魅力的に、時にユーモアを交えて描かれている。
ハーンが見た日本は面影というよりも一種の幻想に過ぎないかもしれない。そこにはエキゾティシズムやオリエンタリズムもあれば、馴染めなかった欧米的なものからの逃避もあるだろう。
ただこのシナリオに描かれているのは、ハーンが日本の美しさに出会う物語ではなく、もっとシンプルに、ハーンが「家族」に出会う物語だと感じる。小泉八雲となるまでのハーンの抱えた深い孤独にこそ、今読んでも共感するものがある。